起きたら血まみれ事件
時は平成15年。独り暮らしの部屋。昼に近い時間。
目が覚めた私は頭が痛いような。いや違う、背中が気持ち悪いような。なんだ、この違和感。
しばらくボーっと天井を眺めていた。
シーツに張り付いた体をゆっくり起こしてみて、ギョッとした。
血まみれである!
ヒーッ!
何これ。頭はパニックだ。
不思議と痛みは感じない。なのにシーツに血がべっとり付いている。端っこはすでに乾いている。
こんな時、まずは女の子、いきなり始まったか?と疑う。パンツ見る。
違う。出血は上半身、背中だ。
怪我した?事故った?
思い出せ!
思い出せ!
昨日の夜、何があった?
確か、私は部長に連れられてワインバーへ行った。滅多に飲めない高級ワインをカパカパやった。オーナーシェフとも盛り上がり、看板を下ろしてからも夜中まで3人で飲み続けた。
余った手づくりパンやフランスのお菓子もたくさん頂いて、上機嫌で帰宅したはず。
翌日、というか当日は仕事が休みで気が緩んでいた。聖子ちゃんの歌を歌いながら千鳥足でマンションにたどり着いたまでは覚えている。
帰ってから化粧を落としたか?歯を磨いたか?
覚えてない。
スーツは脱ぎ捨てて、パジャマには着替えている。
て、いうか、部屋の鍵かけたか???
お、覚えてない!さーっと血の気が引いた。すでに大出血だが。
たしかに少し前、近所に痴漢がいたのを思い出して震えた。てことは変質者か。
私、斬られたの?刺されたの?
死ぬの?えーっ、死んだの?
痛みを感じない体でベッドの周りを右往左往する。気分は鑑識だ。科捜研のまり子さんだ。
シーツの血はベトベトで、所々硬くなっている。油絵みたいに。赤ではなく、茶色に変色している。変な匂いもかすかにする。
私はとりあえず傷口を探そうとパジャマの上着を脱いだ。
なっ!
銀紙が2枚張り付いている。
フランスのチョコレートの…。
昨日もらったチョコレートの…。
あっちゃー。
昨日バッグからお土産を出し、チョコレート2個をベッドサイドに持ち込んだのだ。ピンポン玉サイズの大粒チョコレートだ。食べようとしたのかは不明だが、それが枕元に転がり、背中の下敷きになり、見事、体温で溶けたということだ。
こうして事件は解決した。
そんな事をしでかした私の平成。
平成よ、アデュー!
とにかく飲み過ぎはダメ
※チョコレートの話はこちらも↓